つよくやさしく
大好きな言葉があります。
座右の銘、なんて大げさなものではありませんが、時折思い出して振り返り、「そうあれたかな」と考える、人生の定規のような言葉です。
「人は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きている意味がない」
出典は、ある海外の小説です。(原文およびその日本語訳とはだいぶ違っています※)
私がこの言葉を知ったのは、とある人のラジオの、その人の読んだ本の読後感を語るコーナーの中でだったと思います。
だからその人がこの通りに話したかどうかも定かではありませんし、それを聞いた自分自身、一言一句正しく覚えているとも思えません。
ちなみにその人は、私が両親以外唯一本当の意味で尊敬している、とある話芸人です。
残念ながらすでに亡くなられています。
名言、格言を一言一句正確に覚えることには、覚える以上の意味はないと思っています。というのは言い訳のようですが。
その人も常々おっしゃっていましたが、言葉は自分の中に入り、かみ砕くことで、自分の言葉になる。
この、自分の言葉になる、ということがとても大切なんだと思います。
私はこの言葉を、文字通りその人の言葉として聞きました。
その人の生き方はまさに強くそれ以上にとてつもなく優しくて、その口から語られたこの言葉は私の心にストンとはいりこんだのでした。
生きた言葉はそうして私の中にはいりこみ、かみ砕かれながら私の言葉になっていこうとしています。
それを生きた言葉としてだれかに届ける日が来るのか、それははなはだ謎ですが。
あの人の言葉を聞くことはもうできないけれど、私の中で生きつづけている言葉のおかげで、彼もまた私の中で生き続けている。
そう思うのです。
※原文「If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.」
「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」清水俊二訳
wikipedia「フィリップ・マーロウ」より